2015年04月12日

鳩の撃退法

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「鳩の撃退法」佐藤正午

相当久々に小説のレビュー、というか紹介。
最高やったねこれ。
佐藤正午はおれの地元佐世保の高校の卒業生やから先輩にあたる。
他の卒業生に村上龍もいて、この二人の作品はおれの在学中から学校の図書室においてあった。
高校生にふさわしい「図書」では全くないけどね。。。
そんな異色作家をたくさん排出する佐世保という土地はやっぱりよくも悪くも特殊なんかね。
ともあれ、身内びいきを抜きにしても二人とも素晴らしい作家やと思う。

で、この佐藤正午。デビュー当時は「永遠の1/2」が賞を取ったりして非常に有望視されてたんやけど、その後爆発的に売れることはなく、誤解を恐れずに言えばやや「通好み」の作家というポジションに。
作品はそんなに多くないけど、数年おきに新作が出る度に追っかけて読んできた。
確かに万人受けするような文体ではないし、登場する主人公は(おそらく作者自身を投影して)だらしない女たらしの皮肉屋でギャンブル好きという設定が多い。
でも、それを昔の私小説家みたいにやぼったく沈鬱に書き綴るんやなくて、スマートな文体で、強烈な皮肉もユーモアとして描ききってしまうところがすごい。

さて、そんな作家の最新作はファンならたまらない「正午節」全開。偽札をめぐる物語にぐいぐいと惹きこんでいく。時系列を前後させ、一人称と三人称を織り交ぜて時に読者をも巻き込む、という複雑な設定でありながら難しさは感じさせない。
他の作家が絶賛しているように、確かに佐藤正午は本当に「上手い」作家なんやと感じた。
時代とずれているようでありながら、確かに現在を切り取った素晴らしい作品。
小説の面白さの限界に抵抗するような、作者の静かな闘争を感じる一冊。

いろいろと批判の多い本屋大賞も、一度佐藤正午を選んでみたらいいんじゃないかと。
まあ「鹿の王」は今読んでて、確かに面白いけどね。


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2013年08月08日

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上春樹

IQ84に続き、話題性によって大量の在庫切れを生んだ村上春樹の最新作。
少し乗り遅れたけどようやく読めた。
読み終わってからちょっと各所のレビューとか読んでみたけど、予想通り評価真っ二つ。
というより酷評の方が多いんかな。それもわかるっちゃわかる。

これだけ売れてる作家であれば(本来これだけ売れるべきではないと思ってるけど)読者それぞれで、求める「春樹像」が多岐にわたるのは仕方ない。
IQ84の方が、ミステリー要素が強いだけ万人受けするのもよくわかる。
でもおれとしてはもうね、素晴らしかった。

春樹作品では久々に、ストーリー全体を覆う喪失感・寂寥感。
自らを空っぽの容器みたいだと認める主人公つくるの葛藤と妄想とを静かに描く。
いつものように、特に何も解決しないし救いがあるわけでもない。
孤独を埋めるための「巡礼」を追った、極上のロードムービーみたいな作品。

あるいは彼のファンなら必ず反応する春樹節も全開やし、非常に満足。




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2012年12月31日

2012年【小説】

よし次小説。これももっと冊数いけそうやったけどな。
ドストエフスキーに時間かけすぎた。しんどかった。
圧倒的に一番ってのはあんまないけど、総じて良作に多く出会えたな。


2012年【小説】
作品名/著者(評価:★=1点、☆=0.5点)

マリア・ビートル/伊坂幸太郎(★★★★)
オーデュポンの祈り/伊坂幸太郎(★★★★)
PK/伊坂幸太郎(★★★☆)
夜の国のクーパー/伊坂幸太郎(★★★★)
ぶらんこ乗り/いしいしんじ(★★★)
春から夏、やがて冬/歌野昌午(★★)
神様のボート/江国香織(★☆)
きらきらひかる/江国香織(★★★)
左岸/江国香織(★★☆)
泳ぐのに、安全でも適切でもありません/江国香織(★★☆)
ユーラシアの双子(上)/大崎善生(★★★)
ユーラシアの双子(下)/大崎善生(★★★)
エンプティスター/大崎善生(★★☆)
Railway Stories/大崎善生(★★★☆)
変身・掟の前/カフカ(★★☆)
夜の公園/川上弘美(★☆)
蛇を踏む/川上弘美(★★★)
センセイの鞄/川上弘美(★★★)
龍宮/川上弘美(★★★☆)
乳と卵/川上未映子(★★☆)
メタボラ/桐野夏生(★★)
グロテスク(上)/桐野夏生(★★☆)
グロテスク(下)/桐野夏生(★★★)
柔らかい頬(上)/桐野夏生(★★☆)
柔らかい頬(下)/桐野夏生(★★☆)
晴天の迷いクジラ/窪美澄(★★★)
ふがいない僕は空を見た/窪美澄(★★)
きみは誤解している/佐藤正午(★★★)
恋を数えて/佐藤正午(★★)
ダンスホール/佐藤正午(★★★)
人参倶楽部/佐藤正午(★★★☆)
個人教授/佐藤正午(★★★☆)
カップルズ/佐藤正午(★★★★)
太陽の村/朱川湊人(★★★☆)
ピアニシモ/辻仁成(★★★)
青空の休暇/辻仁成(★★★☆)
アンチノイズ/辻仁成(★★★)
パッサジオ/辻仁成(★★★☆)
クラウディ/辻仁成(★★☆)
右岸/辻仁成(★★★☆)
旅人の木/辻仁成(★★★)
永遠者/辻仁成(★★★☆)
99才まで生きたあかんぼう/辻仁成(★★★★☆)
ツナグ/辻村深月(★★)
カラマーゾフの兄弟1/ドストエフスキー(★★☆)
カラマーゾフの兄弟2/ドストエフスキー(★★☆)
カラマーゾフの兄弟3/ドストエフスキー(★★☆)
カラマーゾフの兄弟4/ドストエフスキー(★★★)
カラマーゾフの兄弟5/ドストエフスキー(★★☆)
乱反射/貫井徳郎(★★★★)
夜想/貫井徳郎(★★☆)
空白の叫び(上)/貫井徳郎(★★☆)
空白の叫び(下)/貫井徳郎(★★★)
さよならの代わりに/貫井徳郎(★★★)
灰色の虹/貫井徳郎(★★★)
崩れる/貫井徳郎(★★★☆)
悪党たちは千里を走る/貫井徳郎(★★☆)
後悔と真実の色/貫井徳郎(★★★)
神のふたつの貌/貫井徳郎(★★)
九月が永遠に続けば/沼田まほかる(★★)
夜明けの街で/東野圭吾(★★★)
TYOゴシック/古川日出男(★★☆)
プリンセス・トヨトミ/万城目学(★★★☆)
偉大なる、しゅららぼん/万城目学(★★★☆)
ホルモー六景/万城目学(★★★)
1973年のピンボール/村上春樹(★★★)
走れ!タカハシ/村上龍(★★★)
長崎オランダ村/村上龍(★★★☆)
村上龍映画小説集/村上龍(★★★☆)
368Y Par4 第2打/村上龍(★★★☆)
ラブ&ポップ/村上龍(★★☆)
悲しき熱帯/村上龍(★★☆)
モニカ/村上龍、坂本龍一(★☆)
ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦(★★★★)
有頂天家族/森見登美彦(★★★★)
横道世之介/吉田修一(★★★☆)
ひなた/吉田修一(★★☆)
静かな爆弾/吉田修一(★★★)
平成猿蟹合戦図/吉田修一(★☆)
東京湾景/吉田修一(★★☆)
太陽は動かない/吉田修一(★★★☆)
我が家の問題/奥田英朗(★★★★)
ウランバーナの森/奥田英朗(★★★★)
ハードボイルド・エッグ/荻原浩(★★★)
母恋旅烏/荻原浩(★★)
幸せになる百通りの方法/荻原浩(★★☆)
あの日にドライブ/荻原浩(★★★☆)
コールドゲーム/荻原浩(★★)
100回泣くこと/中村航(★★☆)
掏摸/中村文則(★★★☆)
王国/中村文則(★★★)
何もかも憂鬱な夜に/中村文則(★★★☆)
土の中の子供/中村文則(★★★☆)
世界の果て/中村文則(★★★☆)
最後の命/中村文則(★★★★)
迷宮/中村文則(★★★)
遠まわりする雛/米澤穂信(★☆)
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2012年10月22日

夜の国のクーパー

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「夜の国のクーパー」伊坂幸太郎

面白かった。
最近あえて昔と作風を変えている印象の伊坂さん。彼の小説で久々に爽快な気持ちになった気がする。
ラストの展開にはまんまとやられてニヤリとしてしまった。

猫と鼠と人間と戦争の物語。童話にも似た感触のファンタジー。
繰り返し言われるのは「すべての物事をただ信じるな」ということ。
まずはそれを疑い、自分で考えろということ。

よく言われることではあるけれど、人間は疑うことをしなさすぎる。
とはいえ他人やテレビの言うことをいちいち「嘘ではないか?」と疑いながら生きるのはしんどい。
それに悲しい。

確かに誰かの考えを鵜呑みにせず、自分の頭で考えることは大事やと思う。
でも登場人物の「弦」のように、いっそのこと丸ごと信じてしまえる方がよっぽど強いんやないかな。
最近はそう思うようになった。変わったなおれ。


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2012年10月04日

迷宮

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「迷宮」中村文則

「言い訳をしてみてください。あなたの存在に対しての言い訳を。客観的に誰もが納得できる言い訳を。」
この一文はすごい。妙に惹かれる。

最近この人の本をよく読む。最近の日本作家ではあまりみかけない、じわじわと沈んでいく内省的でどこまでも暗い世界観。どの作品も一貫して、愛情の欠落で自我が崩壊していく主人公を描く。
いわゆる謎解きも、感動的なストーリーも特にない。そこにあるのは内面の深い混乱と葛藤。そして絶望。
だからこそ、安心する。自分のダークサイドに確かに共鳴して、救われる。

他人にはすすめにくいけど、おれは好きやわ。
落ちてるときにどうしようもなく暗い音楽を聞くと安心する感覚に近い。

本作は彼の作品の中では取り立てて好きなわけではないけど、冒頭の一文が異様に気に入ったから紹介。
もし中村作品を読んでみたい人がいるなら「土の中の子供」「何もかも憂鬱な夜に」あたりをすすめます。

なんや結局すすめてるやん、おれ。


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2012年03月05日

ペンギン・ハイウェイ

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「ペンギン・ハイウェイ」森見登美彦

久々に本のレビュー。
最近の森見小説は面白い。
比較的若い作家さんって、処女作から追いかけていけるからその成長ぶりがわかって楽しいよね。
この人の作品は彼を一躍有名にした「夜は短し歩けよ乙女」から読んでるけど、なんかしっくりこないものが多かった。
面白いんやけどね。文体の凝った感じとかが逆にあざとくなってしまってたり、青春もので童貞臭がしすぎてしんどいやつとかなんか惜しかったんよね。

ただ近作ではそれらの要素がどんどん改善されてて、持ち味の独特のファンタジー感が生き生きしてきた。特にこの作品は単純にすごく楽しかった。

主人公は妙に客観的思考をするタイプの小学生。その脇を固めるちょっと頼りない男友達と、利発的な女の子の3人グループが住む街に起こる不思議な現象の謎に迫る日常の中のSFファンタジー。
この3人組の構図は完全にハリー・ポッターよね笑
筋書きだけ書くとなんか「いかにも」な冒険物に見えてしまうけど、そこは森見さんの腕のみせどころ。
物語全体に漂う非現実が現実に少しだけつっこんでくる独特の浮遊感を味わえる。ディテールの設定も絶妙に「ベタ」さと「突拍子のなさ」の間でバランスを保ってる。

キーとなる人物が「コーラの缶からペンギンを生み出す歯科医院のお姉さん」っていうのがいいよね。この感じにピンと来た人はきっと楽しめると思うよ。おすすめ。

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2012年01月01日

2011年【小説】

よし続いて小説。
ちなみに2010年版はこちらhttp://shimomidai.seesaa.net/article/177692136.html
2011年は図書館が天国ってことを発見してから利用しまくった。目標の100冊を超えて計109冊。よう読んだ。今年はそろそろ海外作家に手をだしてこうかな。


2011年【小説】
作品名/著者(評価:★=1点、☆=0.5点)

塩の街/有川浩(★)
アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎(★★★)
ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎(★★★★☆)
モダンタイムス/伊坂幸太郎(★★★☆)
あるキング/伊坂幸太郎(★★☆)
SOSの猿/伊坂幸太郎(★★★☆)
バイバイ、ブラックバード/伊坂幸太郎(★★★)
オー!ファーザー/伊坂幸太郎(★★★)
I LOVE YOU/伊坂幸太郎、本多孝好ほか(★★★)
娼年/石田衣良(★★☆)
美丘/石田衣良(★☆)
世界の終わり、あるいは始まり/歌野昌午(★★★☆)
葉桜の季節に君を想うということ/歌野昌午(★★)
冷静と情熱のあいだ Rosso/江国香織(★★★)
落下する夕方/江国香織(★★★)
号泣する準備はできていた/江国香織(★★★)
孤独か、それに等しいもの/大崎善生(★★☆)
ロックンロール/大崎善生(★★☆)
存在という名のダンス(上)/大崎善生(★★★★☆)
存在という名のダンス(下)/大崎善生(★★★★☆)
九月の四分の一/大崎善生(★★★☆)
ランプコントロール/大崎善生(★★☆)
タペストリーホワイト/大崎善生(★★★☆)
ディスカスの飼い方/大崎善生(★★★)
普通の愛/尾崎豊(★★★☆)
フライ,ダディ,フライ/金城一紀(★☆)
Because/佐藤正午(★★★)
スペインの雨/佐藤正午(★★★)
リボルバー/佐藤正午(★★★)
アンダーリポート/佐藤正午(★★★☆)
身の上話/佐藤正午(★★☆)
夏の情婦/佐藤正午(★★★★)
王様の結婚/佐藤正午(★★☆)
童貞物語/佐藤正午(★★★★)
放蕩記/佐藤正午(★★☆)
Y/佐藤正午(★★★☆)
サヨナライツカ/辻仁成(★★★)
冷静と情熱のあいだ Blu/辻仁成(★★)
彼女は宇宙服を着て眠る/辻仁成(★★★☆)
千年旅人/辻仁成(★★★)
嫉妬の香り/辻仁成(★★★★)
猛スピードで母は/長嶋有(★★☆)
苦役列車/西村賢太(★★☆)
迷宮遡行/貫井徳郎(★★☆)
慟哭/貫井徳郎(★★★☆)
愚行録/貫井徳郎(★★★)
パラレルワールド・ラブストーリー/東野圭吾(★★)
秘密/東野圭吾(★★★☆)
探偵ガリレオ/東野圭吾(★☆)
さまよう刃/東野圭吾(★★★)
白夜行/東野圭吾(★★★★)
赤い指/東野圭吾(★★☆)
手紙/東野圭吾(★★☆)
正義のミカタ/本多孝好(★★★)
WILL/本多孝好(★★)
at Home/本多孝好(★★★★)
チェーン・ポイズン/本多孝好(★★★)
鴨川ホルモー/万城目学(★★★★)
鹿男あをによし/万城目学(★★★☆)
片眼の猿/道尾秀介(★)
パン屋再襲撃/村上春樹(★★★★)
1Q84(BOOK1)/村上春樹(★★★★☆)
1Q84(BOOK2)/村上春樹(★★★★☆)
1Q84(BOOK3)/村上春樹(★★★★☆)
ピアッシング/村上龍(★★☆)
フィジーの小人/村上龍(★★☆)
テニスボーイの憂鬱(上)/村上龍(★★)
テニスボーイの憂鬱(下)/村上龍(★★☆)
ニューヨーク・シティ・マラソン/村上龍(★★★)
心はあなたのもとに/村上龍(★★★★)
歌うクジラ(上)/村上龍(★★★)
歌うクジラ(下)/村上龍(★★★)
海の向こうで戦争が始まる/村上龍(★★☆)
太陽の塔/森見登美彦(★☆)
きつねのはなし/森見登美彦(★★★☆)
四畳半王国見聞録/森見登美彦(★★★)
初恋温泉/吉田修一(★★★)
7月24日通り/吉田修一(★★☆)
春、バーニーズにて/吉田修一(★★☆)
キャンセルされた街の案内/吉田修一(★★☆)
元職員/吉田修一(★★★)
インディヴィジュアル・プロジェクション/阿部和重(★★)
最悪/奥田英朗(★★★★)
ガール/奥田英朗(★★☆)
邪魔(上)/奥田英朗(★★☆)
邪魔(下)/奥田英朗(★★★)
サウスバウンド(上)/奥田英朗(★★★)
無理/奥田英朗(★★★☆)
サウスバウンド(下)/奥田英朗(★★★☆)
マドンナ/奥田英朗(★★★)
オリンピックの身代金/奥田英朗(★★☆)
真夜中のマーチ/奥田英朗(★★)
純平、考え直せ/奥田英朗(★★★☆)
神様からひと言/荻原浩(★★★)
僕たちの戦争/荻原浩(★★★☆)
誘拐ラプソディ/荻原浩(★)
さよなら、バースディ/荻原浩(★★★)
砂の王国(上)/荻原浩(★★★)
砂の王国(下)/荻原浩(★★★)
噂/荻原浩(★★★☆)
愛しの座敷わらし/荻原浩(★★★)
メリーゴーランド/荻原浩(★★☆)
そのときは彼によろしく/市川拓司(★★☆)
いま、会いにゆきます/市川拓司(★★)
ぐるぐるまわるすべり台/中村航(★☆)
遮光/中村文則(★★☆)
ボトルネック/米澤穂信(★★★)
氷菓/米澤穂信(★★)
フェイク/楡 周平(★★)

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2011年04月17日

存在という名のダンス

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「存在という名のダンス」大崎善生

大崎善生はすごく好きな作家で、ほとんどの著書を読んだ。
今のところおれが知りうる作家の中で、最も価値観に近いものを感じる人。
特に恋愛小説が多い彼の作品でよく語られる、憂いを帯びた恋愛感に。

そんな彼の近著であり、従来の読者からすると非常に問題作といえるであろう本作品。
読後に調べてみたら、予想通りかなり辛口な評価も多くみられたけど、おれとしては大いに肯定したい。
これまでとは畑違いのファンタジーで人間の狂気の本質に迫ろうとした著者の今後を楽しみに追いかけていきたい。

ストーリーは、主人公の少年が北海道の大規模な孤児院を脱走し父親に会いにいくシーンか始まる。
幻想的旅立ちを描く第一章からは、少年の成長を描くロードムービー的な展開が予想される。
ところが読み手を裏切り、そこから物語は大きく膨張していく。
施設から迫る追っ手。絡まりあう歴史の因縁。
緊張感を切らすことなく一気に読みきれる。
ファンタジー要素が強くなる中盤以降はハリー・ポッターの世界に近いし、ハーメルンの笛吹き男をモチーフにした引用なんかはからくりサーカスを思い出す。
日常がファンタジーに片足突っ込んだ(いや後半は完全に突っ込んでるか)世界観に引き込まれる。

タイトルからも感じるように、随所で村上春樹を彷彿とさせる描写が出てきてそれもまたたまらない。

確かに書評で多く叩かれてる要素として、強引な場面切り替えとご都合主義の展開は少なからずあるけれど、それを埋めてあまりある魅力にあふれてる。
作中で引用される隠れキリシタンやナチスドイツの犠牲になったユダヤ人の虐殺描写から問われる人間の人間自身に対する残虐性。
それでも存在を示すために人間はダンスを踊る。

「存在ではない それはダンスなのだ」

この一文がずっと残って離れない。

いろいろと書いたけれど、この小説自体はすごく読みやすい。
大人向けのファンタジーとしてわくわくしながら読み進められる。
もし読んでみようと思ってる人がいるならば、是非「一気読み」をしてほしいな。

ちなみに吹田図書館においてるよ。

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2010年12月31日

2010年【小説】

次は小説。
映画で疲れたので星はつけません。


2010年【小説】
作品名/著者

チョコレート・ヘヴン・ミント/荒木スミシ
阪急電車/有川浩
フィッシュストーリー/伊坂幸太郎
終末のフール/伊坂幸太郎
グラスホッパー/伊坂幸太郎
重力ピエロ/伊坂幸太郎
陽気なギャングが地球を回す/伊坂幸太郎
陽気なギャングの日常と襲撃/伊坂幸太郎
ラッシュライフ/伊坂幸太郎
魔王/伊坂幸太郎
砂漠/伊坂幸太郎
死神の精度/伊坂幸太郎
チルドレン/伊坂幸太郎
パイロットフィッシュ/大崎善生
別れの後の静かな午後/大崎善生
スワンソング/大崎善生
アジアンタムブルー/大崎善生
ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶/大崎善生
イン・ザ・プール/奥田英朗
家日和/奥田英朗
空中ブランコ/奥田英朗
町長選挙/奥田英朗
ララピポ/奥田英朗
シンデレラティース/坂木司
5/佐藤正午
ジャンプ/佐藤正午
彼女について知ることのすべて/佐藤正午
流星ワゴン/重松清
人間失格/太宰治
LOVE/古川日出男
GIFT/古川日出男
2002年のスロウ・ボード/古川日出男
ゴッドスター/古川日出男
ベルカ、吠えないのか?/古川日出男
ソロモンの犬/道尾秀介
ラットマン/道尾秀介
東京奇譚集/村上春樹
回転木馬のデッドヒート/村上春樹
レキシントンの幽霊/村上春樹
蛍・納屋を焼く/村上春樹
カンガルー日和/村上春樹
TVピープル/村上春樹
コックサッカーブルース/村上龍
夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦
ランドマーク/吉田修一
悪人(上)/吉田修一
悪人(下)/吉田修一
パークライフ/吉田修一
女たちは二度遊ぶ/吉田修一
パレード/吉田修一
最後の息子/吉田修一



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2010年10月25日

コックサッカーブルース

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「コックサッカーブルース」村上龍

ひさびさに読んだ、高校の先輩龍さんの本。
あらためて、村上龍という人のすごさを実感する。
高校の頃に図書室にあった彼の作品をたくさん読んだけど、今になって思う。
高校生にわかるわけないやろ!w
「限りなく透明に近いブルー」とか、当時はただの変態エロ小説にしか思えんかったぜ。

この作品のテーマを一言でいうのは難しいけれど、世間一般のリアリティの欠如とそれを追求した場合の限りない葛藤・・・
まあそんなことはさておいて、純粋に面白いのさ。
ストーリーはSMの天才と言われる謎の女を巡って主人公が狂った変態性欲者の集団が巻き起こす壮大な事件に巻き込まれてくっていう。決して万人向けではないけれど。
物事の核心をついた一文を随所に散りばめながら、決して文章のリズムを崩さない。
冷静にみたらどう考えても恥ずかしくて鳥肌が立つようなシーンの描写でも、彼の豪腕によって見事にひきつけられる。
展開にしてもかなりトンデモな方向に進むんやけれど、違和感を感じずに読めるところがまたすごい。

それにしても彼の作品を読むといつも感じるんやけど、狂気と退廃にはどうしようもない魅力がある。
おれはきっといい意味でも悪い意味でもフラットな人間だから惹かれてしまうんかもしれんね。

ふと思った。村上龍をミュージシャンに例えればナインインチネイルズになるんではないか。

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2010年10月09日

ジャンプ

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「ジャンプ」佐藤正午


おれの母校、長崎県立佐世保北高校は二人の著名作家を輩出してる。
一人は「村上龍」、そんでもう一人がこの「佐藤正午」
龍さんに比べて有名ではないけれど、とてもいい作家だと思う。
文章がまわりくどいとことか、「あるいは」みたいなセリフが多いところとか、村上春樹の影響も感じさせる。
まあ、おれはそういうの大好きなんやけど。

で、本作「ジャンプ」を今さらながら読んでみた。
確か2002年の発売当初にも読んだけれど、自分が若すぎてかピンとこなかった。
今回は、すごく面白い。

ストーリーとしては、「リンゴを買いに行ってすぐ戻る」と言って出て行った恋人がそのまま失踪する。
その足あとを辿る主人公の物語。(いかにも春樹的ストーリーやね)

全体のテーマは「些細な出来事や、些細な選択によって運命は驚くほど大きく変わる」そしてそれはもう取り戻すことができない。
言ってしまえばよくある「if」ものなんやけどさ。
主人公の心情とか、情けなさが妙にリアル。
そして適度なミステリー要素を絡めて気持ちよく進んでいく。

たぶん誰もが人生の中で「あの時ああしていれば今頃はどうなってたんやろう?」と想像してしまう出来事があると思う。
それは時に大きな後悔として残る。
けれどどんなに辛い経験も、それに立ち向かって(あるいは翻弄されて)感じた痛みも、時間がその色を変えてく。

時は記憶を俯瞰に変えていく。
それはどうしようもなく寂しいけれど、人間が生きていく上で不可欠な救いだ。
感情はやがて感傷になり、そして郷愁になる。

この小説はその変化を絶妙に描いてる。

しかし、この本のテーマでもある「運命」ってやつの捉え方が自分の中でまだ揺れてるな。
「運命はあらかじめ決まっている」のか
「運命は自分の力で変えていける」のか
みんなはどう考えてるんだろう。

おれは勝手やけれど、その時々で前者をとりたいときもあれば後者を信じたいときもある。
自分がどっちの信念で生きていくか、まだ考える余地がありそうだ。
あらためてそのきっかけを作ってくれた作品です。


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2010年09月06日

砂漠

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「砂漠」伊坂幸太郎

大学生活を舞台とした伊坂氏の青春小説。
読後に爽やかな余韻が残る気持ちのいい物語やった。

物語のキーとなるのはなんといっても西嶋という人物やろう。
自分の信じる正義のために人の目を気にすることなく行動する。
御託や言い訳でなかなか行動に移さない多くの人(自分を含む)に強烈なメッセージを投げかける。

その一方で、おれは主人公の北村にすごく自分を投影して読んでた。
いわゆる「鳥瞰型」で物分りがいい風でありながら、結局自分は何もしない傍観者。
そんな彼が感情豊かな西嶋に影響されながら、徐々に変化していく様がよかったな。

しかしこの本を読んでると自分の大学時代を思い出す。
卒業してからもう5年も経ったのか・・・。
「あの頃に戻りたい」とは思わないけれど、今振り返ってもいい時間を過ごしたなと思える。
いやあ目一杯考えたし、遊んだな。もちろん勉強も。。。
無意味な時間の意味を学べるのは後にも先にも大学時代だけかなと思う。

そんなことを考えながら読み終わったあと、本の表紙絵をみてたらハッと込められた意味がわかって涙が出てきた。
そうか僕らは当時手にしたかけがえのない宝物を持ったまま砂漠を歩いていくんだな。
ならきっと大丈夫。
これからも進んでいける。

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2010年05月23日

悪人

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「悪人」吉田修一

吉田修一という作家は大して好きではない。
といきなりいってみる。
なぜかというと、彼の小説はどうしても現実に則した位置から脱却できない。
一言でいうと「俗」なんよね。
そしてウィットにとんだ言葉もなければ、大した哲学も感じられない。
ま、彼が求めるところではないんやろうけども。

こんだけ言いながらも彼の作品をこれまでにもいくつか読んだ。
なんでやろ、と自分で考えてみる。
@同じ長崎出身のため、作中の方言に親近感を抱く
Aジャケットが好きなやつがある
B

・・・3つめを考えたところで既に思いつかん。
ま、文章は読みやすいよ。
山田先生よりよっぽど日本語書けるし。
てな具合に大して何かを求めるわけでもなく、空いた時間の暇つぶし程度に読んでたのね。

で、本題の「悪人」ですよ。
この作品、彼の作品の中でようやく当たりやと思った。
ストーリーはいつも通り「俗」なんやけれど、その中での心理描写やら逆説的な言い回しなんかが急激によくなってる。

どうしたん?修一君。
やったやん!修一君。

と、これまでなかなか成績の上がらない生徒の成長を目の当たりにした教師のように嬉しくなった。

ま、だからといってこの作品から「何か得た」訳ではないけれども。

吉田修一を読みたい人は「悪人」から読むといいと思います。
(とんだ丸投げの締め方やな)




posted by しもみだい at 18:21| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月01日

ベルカ、吠えないのか?

古川日出男という作家について語ってみる。

beruka.jpg
古川日出男「ベルカ、吠えないのか?」

おれが古川日出男と出会った小説。
もうタイトルとジャケ買いやったね。
なんしタイトルが格好よすぎる。響きも最高にいい。
で、犬のジャケ。
以前書いた「ソロモンの犬」も犬やったけど、全く質が違う。

彼の本をそのあと何冊も読んだけれど、彼の魅力はこのジャケットが象徴しているように思う。
凶暴な文体。むき出しの本能。

ミュージシャンのファンも多いようで、アジカンの後藤正文やナンバガ・ザゼンボーイズの向井秀徳もその一人。
向井とは朗読ライブでの共演もしてる。

この古川×向井のコンビはすごくはまってる。
彼ら2人の世界観はすごく共通してると思う。
都会の狂気。吐き出す嗚咽。

古川日出男の文章をものに形容するなら
「散弾銃」やと思う。
彼の作品では多くのリフレインが使われる。
多くの擬音語が使われる。
むき出しの感情とともにそれらがたたみ掛けるようにしてなだれ込み、文章にリズムを、音楽を与えてる。

だから、彼の本を読む時に「熟読」は向いてない。
それはマシンガンの弾丸を机の上に乗せて眺めてるようなもので、本質とは程遠い。
だからその文章のリズムを感じながら一気に読む。
マシンガンの弾を全身にくらいながら感じ取る。

最後に前述した古川日出男と向井秀徳の朗読動画(音声のみ)を発見したのでのせとく。
こんだけよいしょしといてなんやけど、前半は変人のおっさん二人がしゃべってるようにしか思えんw
ただ、25分すぎくらいから始まる「ベルカ」の部分は本当に素晴らしい。
二人の放つ言葉が乱暴に混ざり合う。鳥肌が立つ。
よかったらそこだけでも聞いてみて。

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posted by しもみだい at 21:23| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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